看護師と理学療法士はなぜ仲が悪い?実際に働いて感じた5つの理由
病院や介護施設で働いていると、**「看護師と理学療法士、なんか仲悪くない?」**と感じることがあります。
もちろん、すべての職場で仲が悪いわけではありません。めちゃくちゃ仲のいい病院もありますし、看護師とリハビリ職が普通に協力している職場もあります。
ただ、私自身も理学療法士として働いてきて、「看護師とリハビリの関係、あまり良くないな」と感じた職場はありました。
昔の私は、理学療法士と看護師の業務範囲や法律上の位置づけも、その原因の一つなのではないかと考えていました。でも、いろいろな現場を経験してきた今は、もっと単純な理由の方が大きいと思っています。
お互いに見ているものが違う。仕事の優先順位も違う。そして、自分たちの仕事を相手が分かっていない。
こういう小さなズレが積み重なって、関係が悪くなっていくのではないでしょうか。
今回は、理学療法士として看護師と一緒に働いてきた経験から、なぜ両者がぶつかりやすいのかを考えてみます。
理由① 看護師と理学療法士では仕事の優先順位が違う
まず大きいのがこれです。
看護師と理学療法士では、同じ患者さんを見ていても仕事の優先順位が違います。
例えば理学療法士なら、「今日は歩行練習をしたい」「できるだけ離床時間を増やしたい」「トイレまで歩けるようにしたい」と考えるかもしれません。
一方、看護師には点滴、処置、内服、検査、食事、排泄、清潔ケア、ナースコール対応など、病棟全体の仕事があります。
そんなときにPTから、
「○○さん、今からリハビリ行けますか?」
と言われる。
PTからすれば普通の確認です。でも看護師からすると、「今それどころじゃない」となることがあります。
逆もあります。
PTが次々と患者さんのリハビリをしているところへ、「○○さん、今トイレ行きたがってるからお願いできる?」と言われる。
PTからすれば、
「いや、次の患者さんの予定があるんだけど」
となることもあります。
どちらかがサボっているわけではありません。お互い自分の仕事をしているだけです。
でも、自分の仕事を中心に考えると「なんで今それを言ってくるの?」となる。こういう小さなズレは結構あると思います。
理由② お互いに「こっちの方が大変」と思っている
これも職種間の関係を悪くする原因の一つだと思います。
看護師側からすると、「リハビリは一人の患者さんを40分見て、終わったら次の患者さんでしょ?」と思われることがあります。
PT側からすれば、「いやいや、こっちも一日中患者さんを回って、記録して、カンファレンスして大変なんだけど」となる。
逆にPTからすると、「この患者さん歩けるのに、なんで病棟では全部車椅子なんだろう」と思うことがあります。
でも看護師からすると、一人の患者さんだけを見ているわけではありません。複数の患者さんを担当しながら業務を回している中で、転倒リスクまで考えれば、リハビリ場面と同じように対応できないこともあります。
結局、相手の仕事って意外と見えていないんですよね。
自分がどれだけ忙しいかは100%分かります。自分でやっていますから。でも、他職種が自分の見えていないところで何をしているのかは、案外知りません。
それなのに、
「こっちはこんなに忙しいのに」
「リハビリは病棟のことを何も分かっていない」
「看護師はリハビリのことを分かってくれない」
となってしまう。
これをやり始めると、だんだん関係がおかしくなっていきます。
理由③ 理学療法士が偉そうにしていることもある
ここはPT側にも原因があります。
理学療法士は身体機能や基本動作、歩行などについて専門的に勉強しています。そのため、「この人は歩けます」「この介助方法ならいけます」「もっと離床させた方がいいです」と看護師へ伝えることがあります。
それ自体は必要なことです。
問題は言い方と伝え方です。
自分が評価した結果を、まるで唯一の正解のように話してしまうPTがいます。
でも、PTが患者さんを見ている時間は一日のうちの一部分です。リハビリ室では歩けても、夜間は全然違うかもしれない。疲れているときにはふらつくかもしれない。認知症のある人なら、時間帯によって状態が変わることだってあります。
看護師は生活の中で患者さんを見ています。
それなのにPTから、
「この人歩けるんで、病棟でも歩かせてください」
とだけ言われたら、看護師からすれば、
「いや、そんな単純じゃないから」
となってもおかしくありません。
PTにはPTの専門性があります。それは間違いありません。
ただ、専門性があることと偉いことは別です。
ここを勘違いして、自分の専門分野からの意見だけを押しつけてしまうと、他職種との関係は悪くなります。
理由④ 看護師の態度がきついことも普通にある
PT側ばかりが悪いわけでもありません。
看護師の中にも、リハビリ職に対して明らかに態度が違う人はいます。
医師には丁寧に話しているのに、PTやOTには「それ、あとにして」「今無理」といった対応になる。
実際に働いていると、こういう人もいます。
看護師は病棟業務の中心にいることが多く、他職種との調整をする場面も多くなります。本人にそのつもりがなくても、言い方によっては他職種から「偉そうだな」と思われることがあります。
忙しいのは分かります。
でも、
忙しいから態度が悪くてもいい、とはならない。
これはPTでも看護師でも同じです。
「今無理です」と言われるのと、「ごめん、今処置中だから10分後でもいい?」と言われるのでは、受け取る側の印象は全然違います。
結局、職種同士の関係なんて、こういう小さなやり取りの積み重ねだったりします。
理由⑤ 「これは誰の仕事?」で揉める
看護師とPTの関係でややこしいのが、職種間の仕事の境目です。
移乗、歩行、トイレ動作、ポジショニング、離床などは、看護とリハビリの両方が関わります。
だからこそ、
「それはリハビリでやってよ」
「いや、病棟でもやってもらわないと意味ないですよ」
という話になりやすい。
でも患者さんからすれば、そんなことは関係ありません。
患者さんは「これはPTがする動作」「これは看護師がする動作」と分けて生活しているわけではないからです。
リハビリでできるようになったことを病棟でも実践する。病棟で困っていることがあれば、リハビリで評価する。
本来はそうやってつながった方がいい。
ただ、現実には人手も時間も限られています。そこで「結局誰がやるの?」という問題が出てきます。
私は、こういう職種の境界にある仕事ほど、コミュニケーションが必要だと思っています。
「PTがやる」「看護師がやる」と線を引くより、この患者さんにとってどうするのが一番いいのか。そのうえで、お互いが現実的にどこまでできるのかを話した方がいい。
簡単そうですが、これが意外と難しいんですよね。
法律上、理学療法士も「診療の補助」を行う
元々この記事では、ここをかなり大きく取り上げていました。
理学療法士及び作業療法士法では、理学療法士・作業療法士は一定の条件のもと、診療の補助として理学療法・作業療法を行うことを業とできるとされています。
一方、看護師についても、保健師助産師看護師法で「療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」とされています。
そのため、以前の私は「診療の補助」という部分で業務領域が重なることも、両職種の関係に影響するのではないかと考えていました。
ただ、今はこれが看護師とPTの仲が悪くなる大きな原因だとは思っていません。
実際の現場で、
「PTが診療の補助をするのは法律上どうなんだ!」
なんて話で看護師とPTが喧嘩することは、まずないでしょう。
それよりも、
「情報をちゃんと伝えてくれなかった」
「言い方が腹立つ」
「こっちの忙しさを考えていない」
「自分の専門性ばかり主張してくる」
こういう日々の小さな不満の方が、両者の関係にはずっと影響していると思います。
看護師と理学療法士、どちらが上かを考えても意味がない
結局、看護師と理学療法士のどちらが上なのか。
どちらの専門性が高いのか。
どちらの仕事が大変なのか。
こんなことを比べても、あまり意味がありません。そもそも役割が違います。
理学療法士には、身体機能や基本動作を見る強みがあります。看護師には、全身状態や医療的管理、療養生活を見る強みがあります。
実際の患者さんには、その両方が必要です。
例えばPTが「この人は歩行器なら歩けます」と評価したとします。
そこで終わったら意味がありません。
「歩行器で見守りなら大丈夫です。ただ、夕方は疲れてふらつきが出るので、そのときは車椅子の方がいいと思います」
ここまで看護師に伝える。
逆に看護師から「昨日の夜からちょっと呼吸状態が違う」と情報をもらえば、PTもその日のリハビリ内容を考え直すことができます。
こうやって、それぞれが持っている情報を出し合えばいい。
自分一人で患者さんのすべてを見られる専門職なんていません。
少なくとも私は、理学療法士として長く働くほど、そのことを感じるようになりました。
仲良くする必要はない。でも一緒に仕事はした方がいい
私は、看護師と理学療法士が無理に仲良くする必要はないと思っています。
飲みに行く必要もありません。プライベートで付き合う必要もない。性格が合わない人だって当然います。
でも、仕事では協力した方がいい。
患者さんにとって、その方がいいからです。
PTが看護師を「リハビリのこと分かってないな」と見下す。
看護師がPTを「リハビリだけやってればいい」と扱う。
そんな関係になって一番困るのは患者さんです。
専門職なので、自分の専門性には自信を持っていいと思います。でも同時に、
「自分が知らないことを、相手は知っている」
くらいに考えておいた方が仕事はうまくいきます。
看護師には看護師の視点がある。介護職には介護職の視点がある。ケアマネジャーにも、その職種にしか見えていないものがあります。
理学療法士の専門性も、その中の一つです。
私は今、自分の専門性を主張する人より、他職種の専門性をうまく使える人の方が、いい仕事をすると思っています。
「看護師と理学療法士はなぜ仲が悪いのか」と考えると、職種の違いや制度に原因を求めたくなります。
でも実際はもっと単純で、普段の言い方だったり、情報共有だったり、相手の仕事への理解だったりするのかもしれません。
看護師だから。
理学療法士だから。
ではなく、
結局は一緒に働く人同士です。
そこを忘れなければ、職種が違ってもそこまで揉めることはないんじゃないかと、私は思っています。
私は理学療法士を採用する時こんなところを見ています。↓
https://homon.site/2026/08/30/理学療法士の面接で採用担当者はどこを見る?年/
