リハビリの話

理学療法士が歩行訓練中に利用者さんを転倒させてしまうアクシデントについて

理学療法士がリハビリをするうえで患者さん(利用者さん)を転倒させてしまうリスクはついて回ります。

私が勤めている訪問看護ステーションでも利用者さんを転倒させたというアクシデントレポートは数か月に1件あがってきます。

最近、理学療法士が訓練中利用者さんを転倒させてしまったというケースがあったので紹介します。

利用者さんの特徴

70歳代の女性でパーキンソン病を呈していました。(ホーエン・ヤールの分類でⅣ程度)

立ち上がり動作は手すりを把持することで自己にて可能、歩行は歩行器を用いて行っていました。

歩行開始時は足がすくみ、なかなか1歩が出ないといった状況でした。また歩行時は重心が前にいき過ぎることで突進する傾向にありました。

理学療法士は歩行訓練中利用者さんの後方に立ち、利用者さんの両脇に理学療法士の手をいれて介助をおこなっていました。突進による転倒を防ぐためです。

 

転倒の経緯

この転倒は歩行訓練中におこりました。

いつものように担当理学療法士が廊下を介助下で歩行訓練していました。

利用者さんは歩行器を使い、理学療法士は利用者さんの両脇に手をいれ介助を行っていました。

いつもは廊下(10m程度)を2往復しているのですが、その日は1往復ちょっとで利用者さんが疲れているように理学療法士は感じたそうです。

その為、休憩するために近くにあった椅子を利用者さんのところへ引き寄せようと介助していた手を片方だけ外しました。

その時、利用者さんは脱力し床に膝をつき膝に擦り傷がつきました。

 

担当理学療法士の問題点

この担当理学療法士は利用者さんが脱力して膝をついてしまうというリスクを想定できていませんでした。

パーキンソン病という疾患からも動作能力の日差はあるだろうということは想定できますし、歩行訓練をする中で、下肢の脱力がおこり床に体の一部を打ちつけることは十分考えられるケースだと思います。

担当理学療法士は突進で前方に倒れる可能性はあると考えていましたが歩行器があるから、急にこけることはないだろうと思っていたようです。

では、何のために利用者さんの脇に手を入れるような介助をしていたのか?というところですが、その理学療法士は明確に答えることができませんでした。

 

理学療法士が歩行中に利用者さんを転倒させるのは最悪のアクシデント

理学療法士はできないことをできるようにするために動作訓練をしますので、あらゆるリスクを想定していなければいけません。

理学療法士が介助していたのであれば、万が一想定外のことがおこっても転倒させない状態を作っておく必要があります。

今回のケースでは今まで大きくバランスを崩すような場面がなかったから、担当理学療法士はどこか気を抜いていた部分があったのでしょう。

 

また、理学療法士が介助する手の位置や立ち位置は意味がないといけません。

この方向にバランスを崩すから理学療法はこの方向に立つ。体のここを操作したいからここに手を置く。下肢が脱力するかもしれないから脇に手を入れるみたいな感じです。

 

施設などでリハビリしているのであれば、施設スタッフに声をかけて椅子を持ってきてもらうというのも1つの手ですね。

 

さいごに

アクシデントを起こしてしまったことは仕方ありません。いくら悔やんでも事実はかわりませんから。

このアクシデントをとおして、きちんと対策をとり同じ失敗を繰り返さないようにするということが大切ですね。

今回このアクシデントを起こした理学療法士は経験年数20年程度のベテランです。

ベテランになるとインシデントレポートをなかなか書かなくなる傾向にあるので、そこを改善することも重要です。

 

 

 

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