訪問看護ステーションで働いていると、「新規利用者を増やすために営業に行ってきて」と言われることがあります。

私自身も訪問看護で働くようになってから、居宅介護支援事業所を中心に営業をしてきました。病院の地域連携室やクリニック、施設、保健所などにも行きましたが、一番多かったのはケアマネへの営業です。

営業というと、パンフレットと名刺を持って、「訪問看護の空きがあります。利用者さんがいたらお願いします」と伝えるイメージがあるかもしれません。もちろん私もパンフレットやチラシ、名刺を持って営業していました。

ただ、今まで営業をしてきた経験から言うと、「利用者さんを紹介してください」とお願いするだけでは、なかなか新規依頼にはつながりません。

実際、営業に行ってその場で利用者さんを紹介してもらったこともあります。では、何をしていたのか。

今回は私が実際にやっていた訪問看護の営業方法と、現在管理する側になって感じる「新規依頼につながる営業」について書いてみます。

訪問看護の営業は居宅介護支援事業所が中心だった

私の場合、営業先の中心は居宅介護支援事業所でした。もちろん、それ以外にも病院の地域連携室やクリニック、施設、保健所などにも行っています。

ただ、介護保険で訪問看護を利用する場合、ケアマネから相談を受ける機会は多くあります。そのため、新規利用者を増やしたいのであれば、居宅介護支援事業所との関係作りはかなり重要だと思っています。

だからといって、手当たり次第に居宅を回って、「訪問看護です。よろしくお願いします」と名刺を配ればいいわけではありません。

新規で訪問する居宅であれば、まず自分たちの訪問看護ステーションについて知ってもらう必要があります。看護師やリハビリ職の体制、対応できる利用者、訪問できる地域、現在の空き状況など、**「この訪問看護ステーションなら何を頼めるのか」**が分かるように伝えていました。

ケアマネからすれば、訪問看護ステーションは一つではありません。その中から自分たちを思い出してもらうには、「何でもできます」ではなく、自分たちの特徴を理解してもらうことが必要です。

「利用者さんを紹介してください」だけなら営業にならない

営業に行くこと自体が目的になってしまっている人を見かけることがあります。

パンフレットを渡して、「空きがあります」「また利用者さんがいたらお願いします」と言って帰ってくる。これだけなら、正直なところ誰でもできます。

「利用者さんを紹介してください」と言うだけなら、それは営業というよりお願いです。

ケアマネも忙しい中で仕事をしています。こちらの新規利用者が少ないからといって、ケアマネには関係ありません。

では、どうすれば次も話を聞いてもらえるのか。私が意識していたのは、営業に行く理由を作ることです。

特に、すでに利用者さんを紹介してもらっている居宅には、その利用者さんの報告をするようにしていました。

既存利用者の報告はかなり大事

私は同じ居宅には、できれば毎月営業に行った方がいいと思っています。ただし、毎月「利用者さんを紹介してください」と言いに行ったら、さすがに邪魔です。

そこで重要になるのが、現在利用してもらっている利用者さんの情報です。

「最近訪問したときはこんな様子でした」「歩行状態が以前と少し変わっています」「ご家族がこんなことを話されていました」「こういう福祉用具を検討してもいいかもしれません」といった情報を伝えます。

特にケアマネは、担当しているすべての利用者宅を頻繁に訪問できるわけではありません。私たちは訪問看護として定期的に自宅へ行っています。そのため、ケアマネが前回訪問してから現在までの利用者さんの変化を知っていることがあります。

また、家族が訪問中にふと話した一言が重要なこともあります。「最近、夜の介護がちょっとしんどくて……」「この前、実は転びそうになったんです」といった話をケアマネに伝えると、喜んでもらえることがあります。

単なる営業ではなく、ケアマネが利用者さんを支援するために使える情報を持っていく。

私はこれがかなり大事だと思っています。

営業は紹介をもらったら終わりではない

訪問看護の営業というと、「営業→新規依頼→契約」で終わりのように考えがちです。でも私は、そこからの方が大切だと思っています。

紹介してもらった利用者さんにきちんとサービスを提供し、その後の状態をケアマネに返す。必要があれば、こちらから提案する。

そうすると、「ちゃんと見てくれているな」「情報を返してくれるな」と思ってもらえる可能性があります。そして次に訪問看護が必要な利用者さんが出てきたときに、自分たちのステーションを思い出してもらう。

営業→紹介→サービス提供→報告・提案→信頼→次の紹介

この流れを作ることが大切だと思います。

実際、一度利用者さんを紹介してくれたケアマネから、その後も相談を受けることがあります。新しい営業先を探し続けることも必要ですが、すでに利用者さんを紹介してくれているケアマネとの関係を大切にすることも営業です。

新規の営業先では「何ができるのか」を伝える

一方、まだ一度も利用者さんを紹介してもらっていない居宅では、報告できる利用者さんがいません。この場合は、自分たちのステーションの特徴を伝えます。

例えば、現在どの曜日や時間帯なら対応できるのか。看護師や理学療法士など、どの職種がいるのか。どんな利用者さんなら対応できるのか。

重要なのは、ケアマネが利用者さんのサービスを検討したときに、

「そういえば、あそこの訪問看護なら対応してくれるかも」

と思い出してもらうことです。

私自身、営業に行ったその場で利用者さんを紹介してもらったことがあります。もちろん毎回そんなことが起こるわけではありませんが、ケアマネがちょうど訪問看護を探しているタイミングと、こちらが営業に行ったタイミングが重なることはあります。

だからこそ、営業件数もある程度必要になります。

新規相談へのレスポンスはその日のうちにする

私が訪問看護の営業でかなり重要だと思っているのが、レスポンスの速さです。

ケアマネから「この曜日、この時間で訪問できますか?」と相談されたとします。私なら、基本的にはその日のうちに回答します。

すぐに判断できない場合もあります。例えば既存の利用者さんの時間を変更すれば受け入れられるかもしれない。その利用者さんや担当者に確認しないと分からない。

そういう場合でも放置はしません。

「調整しますので、明日の午前中までには回答します」など、いつ回答できるのかをその日のうちに伝えます。

ケアマネも利用者さんのサービスを早く決めなければならないことがあります。こちらからの返事を何日も待ってくれるとは限りません。

返事が遅ければ、別の訪問看護ステーションに相談するでしょう。営業でどれだけいい話をしても、実際に相談が来たときのレスポンスが遅ければ意味がありません。

簡単に「無理です」と断らない

もう一つ私が大切だと思っているのが、できるだけ断らないことです。

もちろん、どんな依頼でも無条件で受けるという意味ではありません。人員や訪問地域、利用者さんの状態などによって、どうしても対応できないことはあります。

ただ、相談された曜日・時間に空きがないからといって、その場ですぐ「無理です」と答えるのではなく、一度考えます。他の利用者さんの訪問時間を変更できないか、別の曜日ならどうか、別のスタッフなら対応できないか。

「どうすれば受けられるか」を一度考えてから回答する。

この姿勢はかなり大事だと思っています。

ケアマネからすれば、相談するたびに「無理です」と言われるステーションより、「一回調整してみます」と言ってくれるステーションの方が相談しやすいはずです。

営業で新規依頼を増やしたいのであれば、営業先での話し方だけではなく、依頼を受けた後の対応まで含めて考える必要があります。

営業するなら制度を理解している人がいい

訪問看護の営業は誰が行っても同じかというと、私はそうは思いません。できれば、事業所全体のことを理解している人が行った方がいいと思っています。

営業先では、単に空き状況だけを聞かれるわけではありません。制度について質問されることもあります。

そのときに「ちょっと分からないので確認しておきます」ばかりでは、なかなか話が進みません。もちろん、分からないことを適当に答えるのは絶対にダメです。分からなければ持ち帰って確認すればいい。

ただ、制度や自分たちのサービスについて聞かれたときに、その場ですっと答えられる人は信頼されやすいと思います。

さらに営業する人は、現在の空き状況やスタッフの能力、対応可能な利用者なども理解しておく必要があります。

「営業担当だから営業だけ知っていればいい」では弱い。

訪問看護のことを理解している人が営業に行くからこそ、その場で具体的な話ができます。

「営業しています」ではなく件数を確認する

ここからは管理者側の話です。

新規利用者が増えない事業所で、「営業には行っています」と言われることがあります。私はまず、こう聞きます。

「何件行ったの?」

次に、「どこへ行ったの?」「誰と話したの?」「どんな反応だったの?」と確認します。

大体の場合、ここがきちんと把握できていません。本人は営業しているつもりでも、月に数件しか行っていないかもしれません。同じところばかり回っているかもしれない。

これでは改善のしようがありません。

私たちは、営業件数、営業先、誰に対応してもらったのか、営業時の反応などを記録し、他の職員とも共有しています。

例えば、「この居宅は○○さんが対応してくれた」「リハビリの利用者を探していると言っていた」「今は必要ないが、空き状況は知りたいとのことだった」といった情報が残っていれば、次に営業する人も話を続けられます。

逆に何も記録していなければ、毎回初めて営業に行くようなものです。

本気で営業するなら目標件数を決める

私は、訪問看護ステーションが本気で新規利用者を増やしたいのであれば、営業件数の目標は決めた方がいいと思っています。

「時間があったら営業に行ってください」では、おそらく行かなくなります。訪問が入る、書類を書く、電話が鳴る、他の業務が出てくる。営業は緊急性が低いので、どうしても後回しになります。

だから、「今月何件営業するのか」「誰が行くのか」「どこの居宅へ行くのか」をある程度決める。そして月末に、実際に何件行ったのかを確認する。

ただし、営業件数だけを追えばいいわけではありません。

100件回ってパンフレットを置いてくるだけなら、それで新規依頼が増えるとは限りません。件数を確保しながら、営業先で何を話したのか、その後どんな反応があったのかまで見る必要があります。

訪問看護の営業で一番大切なのは「次も相談したい」と思ってもらうこと

訪問看護の営業に、特別なテクニックが必要だとは思っていません。パンフレットやチラシを持って居宅を回ることも必要です。

でも、それだけでは不十分です。

既存利用者の情報を返す。家族の様子を伝える。必要ならこちらから提案する。新規相談が来たらその日のうちに反応する。すぐに断らず、どうすれば受けられるかを考える。

そういうことを積み重ねて、

「何かあったら、あの訪問看護に一度相談してみよう」

と思ってもらう。

私はそれが訪問看護の営業だと思っています。

そして管理する側は、「営業を頑張れ」と言うだけではいけません。誰が、どこへ、何件行ったのか。誰と話して、どんな反応だったのか。その後、新規依頼につながったのか。そこまで管理する必要があります。

営業しているのに新規利用者が増えないのであれば、まず「営業しています」という言葉を数字にしてみる。

それだけでも、問題が見えてくることがあります。

営業件数が足りないのか。行く場所が偏っているのか。営業内容が悪いのか。それとも相談は来ているのに、こちらのレスポンスや受け入れ体制に問題があるのか。

原因によって、やることはまったく違います。

訪問看護の営業は、パンフレットを配って終わりではありません。

紹介してもらった利用者さんにきちんとサービスを提供し、その情報をケアマネに返し、次の相談につなげるところまでが営業。

私はそう考えています。