理学療法士として病院で働いていると、一度くらいは「訪問看護の方が給料が高いらしい」という話を聞いたことがあるのではないでしょうか。

私自身も病院で理学療法士として約10年間働いたあと、訪問看護ステーションへ転職しました。

結果から言うと、私の場合は訪問看護へ転職して給料は上がりました。

当時の記事を読み返してみると、新人時代の年収は約360万円。病院で約10年間勤務して主任になった頃でも、年収は約390万円でした。

そこから訪問看護へ転職したときに提示された条件が、年収約450万円+歩合です。そして転職から3年後には、本業だけで年収約550万円、アルバイトを含めると約600万円になったと当時のブログに書いています。

もちろん、これはあくまで私のケースです。

「訪問看護に転職すれば誰でも給料が100万円上がる」という話ではありません。ただ、少なくとも私にとっては、病院で昇給を待ち続けるよりも、訪問看護へ転職したことが年収を上げる大きなきっかけになりました。

今回は、実際に病院から訪問看護へ転職した私が、給料だけではなく仕事内容や働き方がどう変わったのかまで含めて書いてみます。

病院で約10年働いても年収は大きく上がらなかった

私は理学療法士になってから、最初は病院で働いていました。

新人の頃の年収は約360万円。その後、経験を重ねて後輩や学生を指導するようになり、主任にもなりましたが、当時の年収は約390万円でした。

約10年間働いて、年収が30万円ほど上がったことになります。

もちろん、当時の勤務先の給与体系によるものなので、すべての病院が同じというわけではありません。ただ、私の場合は病院で働き続けて年収を大きく上げるなら、さらに上の役職を目指す必要があったと思います。

そこで私は病院を辞めて、訪問看護ステーションへ転職しました。

転職時に提示された条件は年収約450万円+歩合。単純に比べると、転職した時点で年収のベースが大きく変わりました。

私にとってはこれがかなり大きかったです。

訪問看護に転職して3年後には年収約550万円になった

訪問看護へ転職したあとは、訪問件数に応じた歩合もありました。

当時のブログを読み返すと、転職から3年後には本業だけで年収約550万円になっています。さらに当時はアルバイトもしていたため、それを含めると約600万円だったようです。

病院で約10年間働いて主任になっても390万円だったことを考えると、私の場合はかなり大きな変化でした。

ただ、ここで勘違いしてほしくないのは、「訪問看護=高収入」ではないということです。

訪問看護ステーションによって給与体系はかなり違います。基本給が高いところもあれば、基本給を抑えてインセンティブを大きくしているところもあります。

訪問件数による歩合がない会社も当然あります。

だから「訪問看護に行けば給料が上がる」と考えるのではなく、今の職場より条件のいい訪問看護ステーションへ転職できるかを見る必要があります。

給料目的で訪問看護へ転職するのは全然ありだと思う

「給料を上げたいという理由だけで転職するのはどうなの?」

と思う人もいるかもしれません。

私は、全然ありだと思っています。

仕事をする理由は人それぞれです。やりがいを一番に考える人もいれば、休日を重視する人もいる。給料を重視する人がいても何もおかしくありません。

特に病院で働いていて、今後の昇給があまり期待できないのであれば、給与水準の違うところへ転職するのは一つの方法です。

私自身、それで実際に年収が上がっています。

ただし、給料だけを見て転職先を決めるのはおすすめしません。

訪問看護には病院とは違った大変さもあります。

訪問看護は病院より休みにくいことがある

訪問看護へ転職するときに確認しておいた方がいいと思うのが、休みの取りやすさです。

訪問看護は、あらかじめ利用者さんの訪問予定が組まれています。

自分が休むことになれば、その訪問をどうするのか考えなければなりません。他のスタッフに代わってもらおうと思っても、そのスタッフにもすでに訪問予定が入っていて、空きがないことがあります。

実際にその調整をするのは上長になることが多いでしょうから、一番しんどいのは上長かもしれません。

ただ、働く側としても「明日休みたい」となったときに、自分の訪問予定が何件も入っていれば気を遣うことはあると思います。

病院なら一人休んでも部署全体でフォローできるところが多いですが、訪問看護は病院より小規模な事業所もあります。

給料が上がったとしても、休日や有給休暇の取りやすさまで良くなるとは限りません。

だから転職するときは、年収だけではなく、年間休日や有給休暇の取得状況、スタッフ数、急な休みが出たときの対応なども確認しておいた方がいいと思います。

リハビリそのものは病院と大きく変わらなかった

病院から訪問看護へ転職する理学療法士の中には、

「訪問のリハビリって病院と全然違うの?」

と不安に思う人もいるでしょう。

私自身の感覚では、リハビリでやること自体はそれほど大きく変わらないと思っています。

もちろん対象となる利用者さんや疾患によって内容は違いますが、理学療法士として評価して、必要な運動や動作練習を行うという基本は同じです。

だから病院である程度の経験を積んでいる理学療法士であれば、訪問看護へ転職したからといって、これまでの経験が通用しなくなるようなことはないと思います。

むしろ私は、病院で経験したことを訪問でかなり使いました。

ただ、働いているうちに病院より深く考えるようになったこともあります。

家族への指導や福祉用具は病院時代より考えるようになった

訪問リハビリの大きな特徴は、利用者さんが実際に生活している場所へ行くことです。

病院ではベッドや廊下、リハビリ室など、ある程度整った環境でリハビリを行います。

でも自宅は違います。

玄関に段差がある。廊下が狭い。ベッドからトイレまで距離がある。家族が介助している。

実際の生活を見るからこそ、単純に「歩ける・歩けない」だけでは考えられなくなります。

どんな福祉用具を使えば生活しやすくなるのか。手すりはどこに必要なのか。家族にはどのように介助してもらえばいいのか。

私は訪問看護で働くようになってから、家族への指導や福祉用具について、病院勤務の頃より深く考えるようになりました。

これは訪問で働いて良かったことの一つだと思っています。

最後まで利用者さんに関われるのも訪問の良さだった

私が病院から訪問看護へ転職して良かったと思ったことは、給料だけではありません。

病院でリハビリをしていると、どうしても期限があります。

まだリハビリを続けた方がいいと思っていても、入院期間や制度上の問題などから退院・終了になることがあります。

私自身、不完全だと感じる状態でリハビリが終了することも何度も経験しました。

一方、訪問では必要性や制度上の条件などはありますが、本人が希望しサービスを継続できる状況であれば、病院より長期間関われることがあります。

退院直後から関わって、その人が自宅でどう生活していくのかを見ていく。

状態が変われば、その都度リハビリの内容も変える。

私にはこの働き方が合っていました。

「最後まで関わる」という表現がどこまでを指すかは人によって違いますが、病院勤務の頃より長く一人の利用者さんに関われるようになったことは、訪問へ転職して良かったと感じています。

一人で動ける自由さも私には合っていた

もう一つ、私が訪問看護を気に入った理由があります。

基本的に一人で動けることです。

訪問先へ向かって、利用者さんのリハビリをして、次の利用者さんのところへ移動する。

もちろん事業所としてのルールはありますし、看護師やケアマネなどとの連携も必要です。

それでも、病院のように常に大勢の職員と同じ場所で働くのとは違います。

私はこの一人で動く自由度の高さが結構好きでした。

人によっては一人で訪問することを不安に感じるかもしれません。

でも私の場合は逆で、病院へ戻りたいと思ったことはありませんでした。

これは給料とは直接関係ありませんが、転職後も訪問看護を続けられた理由としては大きかったと思います。

訪問看護では制度の勉強が必要になる

一方で、訪問看護へ転職して大変だったことの一つが制度です。

病院勤務でも医療制度の知識は必要ですが、訪問では介護保険や医療保険などについて聞かれる機会が増えました。

利用者さん本人だけではありません。

家族から聞かれることもあれば、ケアマネから確認されることもあります。

そこで毎回「分かりません」では困ります。

私も訪問看護へ転職してから、制度についてかなり勉強しました。

これは人によってはしんどいと思います。

リハビリの技術だけ勉強していればいいわけではなく、在宅で働くために必要な制度やサービスについても知っておく必要がある。

訪問看護への転職を考えている理学療法士には、ここも知っておいてほしいです。

訪問看護で給料を上げるなら「人と関われる力」も必要

訪問看護で給料を上げていくには、まず訪問件数をある程度こなせることが重要です。

インセンティブ制度がある会社なら、訪問件数がそのまま給料につながることもあります。

でも、その先を考えるなら、それだけでは足りないと思っています。

利用者さんや家族とうまく関係を作れる。ケアマネとも関係を作れる。必要なら営業もできる。

こういった能力がある理学療法士は強いです。

そして、さらに年収を上げようとすれば、管理職も選択肢に入ってきます。

ここで私がかなり重要だと思っているのが、他者と関係を作れることです。

理学療法士として技術が高くても、人との関係を作れない人に管理職は難しいと思います。

管理職になれば、自分と利用者さんだけの関係ではなくなります。

部下、看護師、介護職、ケアマネ、利用者、家族、会社の上司など、いろいろな人の間に入って仕事をすることになります。

だから訪問件数をたくさん回れるだけではなく、周囲とうまく仕事ができる人の方が、その先のキャリアにもつながりやすいと思っています。

今やり直しても、病院を経験してから訪問看護へ行く

では、今の私がもう一度理学療法士として働き始めるならどうするか。

私はおそらく、最初から訪問看護には行かないと思います。

まず病院で働きます。

病院でいろいろな疾患の患者さんを見て、評価やリスク管理、他職種との連携などを経験する。

ある程度経験を積んでから、訪問看護へ転職すると思います。

これは「新人は訪問看護で働けない」という意味ではありません。

教育体制が整っている訪問看護ステーションなら、新人から働く選択肢もあるでしょう。

ただ、私自身のキャリアを振り返ったとき、病院で約10年間働いた経験は無駄ではありませんでした。

病院で身につけたものを持って訪問へ行ったからこそ、一人で利用者さんの自宅へ行くことにも大きな抵抗がなかったのだと思います。

だから過去に戻ったとしても、

病院で経験を積む → 訪問看護へ転職する

という流れは、おそらく変えません。

訪問看護への転職で給料は上がるのか

私の場合、答えは「上がった」です。

病院で約10年間働いて主任になった頃の年収が約390万円。訪問看護への転職時に提示された条件が約450万円+歩合で、転職から3年後には本業だけで約550万円になっていました。

ただ、訪問看護ならどこへ転職しても同じ結果になるわけではありません。

給料を目的に訪問看護へ転職すること自体は、私は全然ありだと思っています。

ただし、基本給や賞与だけではなく、インセンティブの条件、訪問件数、休日、残業、休みやすさなども確認した方がいいでしょう。

そして実際に働き始めれば、リハビリ以外にも制度を勉強する必要があります。家族への指導や福祉用具について考えることも増えます。

それでも私にとっては、給料が上がったことだけでなく、一人で動ける自由さや、利用者さんの生活に長く関われることも含めて、訪問看護へ転職したことは良かったと思っています。

病院で働きながら「このまま働いていても給料があまり上がらない」と感じているのであれば、訪問看護は一度検討してみてもいい選択肢だと思います。

少なくとも私は、病院を辞めて訪問看護へ転職したことを後悔したことはありません。